共有・保存・削除|データ利用・法律・権利の読み方
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データ利用・法律・権利の読み方(初級・読む30分+演習30分)
この授業のゴール
- データを共有する前に、受け手・目的・範囲(列と行)・形式・方法・契約条件・記録の7点を確認できる
- 共有の種類(社内の他部署、委託先、第三者提供、一般公開)ごとに、追加で確認すべき点を説明できる
- データ台帳から保存期限を過ぎたデータを抽出し、削除の対象範囲(コピー、中間ファイル、バックアップ、派生物)を洗い出せる
- 削除の求めや撤回に対して、すぐに断定せず、範囲・保存義務・対応方針・記録を整理して担当部署と進められる
仕事でどう使うか
データは、取得した瞬間よりも、コピーされ、渡され、置きっぱなしにされることで危険が増えます。漏えいの多くは、共有の仕方や、不要になったデータの放置から起きます。
| 路線 | この授業の使いどころ |
|---|---|
| DS(データサイエンティスト) | 分析結果や抽出データを他部署に渡すとき、列と行を絞り、集計で足りるなら集計を渡す。分析用の中間ファイルを期限どおりに消す |
| ML(機械学習エンジニア) | 学習データ・特徴量・学習済みモデルの保存場所と保存期限を台帳に書き、削除の求めがあったときに影響範囲(どのモデルに使われたか)を答えられるようにする |
| DX(DX推進・AI企画) | 部門間・委託先とのデータ共有の手順書と、保存期間表を整備する。ベンダーとの契約に、返却・削除の条項を入れる |
| RS(研究者) | 研究データの保存期間(所属機関の規程や研究費の条件で定められていることがある)、論文と同時のデータ公開の範囲、共同研究者との共有方法を決める |
この授業では、データのライフサイクル(取得→利用→共有→保存→削除)の後半を扱います。
前提
- 3層(法律・契約・組織規程) → 法律・契約・組織規程
- 第三者提供、委託、データの最小化、少人数セルの注意 → 個人情報と利用目的
- 同意の版と撤回の管理 → 同意とデータ取得
- 日付の扱い(文字列の日付と比較) → 数値・カテゴリ・日時・欠損
この授業の位置づけ:法律・ガイドラインの説明は、執筆時点(2026年)の一般的な説明です。法令・ガイドラインは改正され、管轄(国・地域)や個別の事実で結論が変わります。この授業は法的助言ではありません。実際の案件では、最新の公式情報を確認し、社内の法務・知財・個人情報保護の担当者や弁護士などの専門家に相談してください。教材の自己採点で「合格」しても、それは法的な承認ではありません。
身近な状況:「念のため、全部送っておきます」
架空の家電メーカーで、営業企画部から分析チームに依頼が来ました。
「来月のキャンペーンの参考に、関東の顧客の購入傾向が知りたいです。データを送ってください。」
分析チームの若手の加藤さんは、顧客データベースから全顧客・全列(氏名、住所、電話番号、メールアドレス、購入履歴、問い合わせ履歴)をCSVに書き出し、チャットツールで送りました。「念のため全部送っておけば、あとで追加の依頼が来ないので効率的だ」と考えたのです。
3か月後、次のことが分かりました。
- 営業企画部が必要だったのは「関東の年代別・カテゴリ別の購入金額」という集計表だけだった。
- CSVは営業企画部の共有フォルダにコピーされ、さらに外部の広告代理店にもメールで転送されていた。
- 加藤さんのPCのダウンロードフォルダ、チャットの添付ファイル、共有フォルダの3か所にコピーが残っていた。
- 顧客の1人から「自分のデータを削除してほしい」と連絡があったが、どこにコピーがあるか誰も把握していなかった。
この失敗の原因は、共有の前に「誰が、何のために、どの範囲を、どの形で必要としているか」を確かめなかったこと、そして「どこに何があるか」を記録していなかったことです。この授業では、共有・保存・削除の確認点と、台帳を使った管理を学びます。
直感的な説明:渡すデータは「必要な分だけ」、置くデータには「期限」を
共有と保存を、家の鍵にたとえて考えます。
- 鍵(データ)を人に渡すとき、家全体の合鍵ではなく、必要な部屋の鍵だけを、必要な期間だけ渡します。渡した相手と日付を記録しておきます。
- 使わなくなった合鍵は回収します(削除)。どこに合鍵があるか分からなければ、回収できません。
データに置き換えると、3つの原則になります。
- 最小化して共有する:必要な列・必要な行・必要な粒度(個票か集計か)だけを渡す。集計で足りるなら集計を渡す。
- 期限を決めて保存する:「いつか使うかもしれない」で無期限に置かない。保存期間の根拠(法令・契約・規程・業務上の必要)を書く。
- 場所を記録して削除する:コピー・派生物の場所を記録しておき、期限が来たらすべて消し、消したことを記録する。
ただし「何でもすぐ消す」のも誤りです。法令や契約で一定期間の保存が求められる記録(会計や取引に関する記録など)もあり、勝手に消すと別の問題になります。保存と削除は、根拠に基づいて決めます。
正確な定義:共有の種類、保存期間、削除の範囲
共有の種類と追加の確認点(一般的な整理)
| 共有の種類 | 例 | 追加で確認すること |
|---|---|---|
| 社内の他部署 | 営業企画部に渡す | 利用目的の範囲内か、受け手の部署に閲覧権限があるか、社内規程の承認 |
| 委託先 | 分析会社に業務として依頼 | 委託契約(委託の範囲、再委託、返却・削除)、委託先の安全管理、委託元としての監督 |
| 第三者提供 | 提携企業に渡す | 原則として本人の同意、提供の記録、受け手側の利用条件(契約) |
| 一般公開 | オープンデータ、論文の補足データ | 個人が特定されない加工(集計、匿名化)、ライセンスの選択、元データの権利・契約上の公開可否 |
共有前の7点チェック
- 受け手:誰が(部署・会社・個人)受け取り、誰が閲覧できるか
- 目的:何に使うか。利用目的・契約目的の範囲内か
- 範囲:必要な列と行は何か。集計で足りないか
- 形式:個票・仮名化・集計・匿名化のどれか
- 方法:アクセス権を設定した共有フォルダ、期限付きリンクなど、社内規程で認められた方法か。メール添付やチャットは規程で禁止されていることがある
- 契約条件:再提供の禁止、利用期間、返却・削除の義務
- 記録:いつ・誰に・何を・何の目的で渡したか
保存期間の決め方:データごとに、保存期間の根拠を書きます。
| 根拠の種類 | 例 |
|---|---|
| 法令 | 法令で一定期間の保存が求められる帳簿・記録(期間はデータの種類で異なるので担当部署に確認) |
| 契約 | 「契約終了後、受領データを30日以内に返却または削除する」 |
| 社内規程 | データの分類ごとの保存期間表 |
| 業務上の必要 | 「キャンペーン効果の検証が終わるまで」 |
個人情報保護法では、個人データを利用する必要がなくなったときは、遅滞なく消去するよう努めることが求められていると説明されています。
削除の範囲:「削除した」と言えるのは、次の場所をすべて確認した後です。
- 本番のデータベース
- コピー(個人PC、共有フォルダ、メール・チャットの添付、外部ストレージ)
- 分析環境の中間ファイル、ログ
- バックアップ(すぐに消せない場合は、世代管理で期限後に消える仕組みと、それまで復元に使わない運用を確認)
- 派生物(集計表、特徴量、学習済みモデル)
- 共有先・委託先にあるコピー(削除の依頼と完了の確認)
削除したら、何を・いつ・どの方法で・誰が消したかを記録します。
段階付き例題:台帳から削除対象を洗い出す
架空のデータ台帳です。今日は2026年10月11日とします。
| dataset | owner | retention_until(保存期限) | copies(保存場所) | shared_with(共有先) |
|---|---|---|---|---|
| D1 キャンペーン応募者 | 営業企画 | 2026-06-30 | 本番DB、分析環境 | 広告代理店 |
| D2 解約予測の学習データ | 分析 | 2027-03-31 | 分析環境 | なし |
| D3 アンケート回答 | 商品企画 | 2026-09-30 | 共有フォルダ | なし |
| D4 委託先からの返却待ち | DX推進 | 2026-12-31 | 委託先 | 委託先 |
ステップ1:期限切れを抽出する。今日より前の期限は D1(6月30日)と D3(9月30日)。
ステップ2:削除の範囲を洗い出す。
| dataset | 自社で削除する場所 | 共有先への対応 | 派生物 |
|---|---|---|---|
| D1 | 本番DB、分析環境 | 広告代理店に削除を依頼し、完了報告を受ける | 応募者リストから作った集計表は個人が特定されないか確認し、残すなら台帳に別の行で登録 |
| D3 | 共有フォルダ | なし | 回答を使った報告書の扱いを確認 |
ステップ3:保存の必要がないか確かめる。削除する前に、法令や契約で保存が求められていないか、データの所有者(owner)に確認します。ここでは「D1・D3 とも保存期限の根拠は業務上の必要(キャンペーン・調査の終了)で、延長の理由なし」と確認できたとします。
ステップ4:削除して記録する。
2026-10-12 D1:本番DBのテーブル削除、分析環境のファイル削除(担当:加藤)。広告代理店に削除依頼を送付(10-12)、完了報告受領(10-19)。バックアップは世代管理により2026-11-30までに消去予定、それまで復元に使わない。
コードで期限切れを抽出すると次のようになります。
import pandas as pd
ledger = pd.DataFrame({
'dataset': ['D1', 'D2', 'D3', 'D4'],
'retention_until': ['2026-06-30', '2027-03-31', '2026-09-30', '2026-12-31'],
'shared_with': ['広告代理店', None, None, '委託先'],
})
ledger['retention_until'] = pd.to_datetime(ledger['retention_until'])
today = pd.Timestamp('2026-10-11')
ledger['overdue'] = ledger['retention_until'] < today
ledger['days_left'] = (ledger['retention_until'] - today).dt.days
print(ledger)
print('期限切れ:', ledger.loc[ledger['overdue'], 'dataset'].tolist())
print('共有先にも依頼が必要:',
ledger.loc[ledger['overdue'] & ledger['shared_with'].notna(), 'dataset'].tolist())
pd.to_datetime は日付の文字列を日時型に変換する関数で、日時どうしの引き算の結果から .dt.days で日数を取り出せます。days_left が負の値なら期限切れです(D1 は −103 日、D3 は −11 日)。
操作して理解する:共有の依頼を最小化する
冒頭の営業企画部の依頼「関東の顧客の購入傾向が知りたい」に対して、渡すデータを段階的に小さくしてみます。
| 案 | 渡すもの | 列 | 行 | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| A | 全顧客・全列のCSV | 氏名・住所・電話・メール・購入・問い合わせ | 全国の全顧客 | 目的に不要な列と行が大半。漏えい時の被害が最大 |
| B | 関東の顧客の個票 | 顧客ID・年代・購入カテゴリ・金額 | 関東の顧客 | 列と行は絞れたが、個票なので照合で個人が分かる可能性 |
| C | 関東の集計表 | 年代×カテゴリ別の人数・購入金額合計 | 集計値(少人数のセルは非表示) | 目的を満たし、個人が特定されにくい |
次のコードは、案Bの個票から案Cの集計表を作り、人数が3人未満のセルを非表示(NaN)にします。基準の人数はここでは説明のための仮の値で、実際は社内基準に従います。
import pandas as pd
rows = pd.DataFrame({
'age_group': ['20代', '20代', '20代', '30代', '30代', '30代', '30代', '70代'],
'category': ['家電', '家電', '家電', '家電', '家電', '家電', '日用品', '家電'],
'amount': [30000, 45000, 12000, 80000, 52000, 61000, 3000, 250000],
})
agg = rows.groupby(['age_group', 'category']).agg(
people=('amount', 'size'), total=('amount', 'sum')).reset_index()
MIN_CELL = 3 # 説明用の仮の基準
agg['total_shown'] = agg['total'].where(agg['people'] >= MIN_CELL)
print(agg[['age_group', 'category', 'people', 'total_shown']])
groupby(...).agg(people=('amount','size'), total=('amount','sum')) は、グループごとに人数(行数)と金額合計を計算します。where(条件) は条件を満たさない値を NaN(欠損)に置き換えます。
出力では、30代×日用品(1人)と70代×家電(1人)の合計が NaN になり、表示されません。70代×家電の 250,000円は、1人の購入額そのものだからです。
値を変えて考える:MIN_CELL を 1 にすると何が起きますか? → すべてのセルが表示され、1人のセルから個人の購入額が分かります。逆に大きくしすぎると、ほとんどのセルが非表示になり、営業企画部の目的を満たせません。基準は目的とリスクの両方を見て、担当部署と決めます。
発展:学習済みモデルとバックアップの削除
- 学習済みモデル:学習データから消しても、学習済みのモデルにはその人のデータの影響が残ります。一般的な対応は、その人のデータを除いた再学習です。特定データの影響だけを取り除く研究(machine unlearning)も進んでいますが、実務で確立した方法とは言いにくい段階です。モデルがどのデータの版で学習されたかを台帳に記録しておくと、影響範囲を答えられます。モデルが個人データにあたるか、削除の求めがどこまで及ぶかは議論があり、担当部署・専門家に確認します。
- バックアップ:特定の1人のデータだけを消すのは難しいことが多く、世代管理で一定期間後に消えることを確認し、それまでに復元するときは削除済みデータを再び消す手順を決めておく運用がとられます。
- 公開したデータ:ダウンロードされたコピーは回収できません。公開の判断は削除より前の段階で慎重に行います。
限界:削除の技術的な方法と、法律・契約上どこまで求められるかは別の問題です。技術的に何ができて何に時間がかかるかを正確に伝え、方針は担当部署と決めます。
よくある失敗
失敗1:「社内だから」全列をチャットで送る
誤った例:他部署から依頼を受け、全顧客・全列のCSVをチャットに添付して送った。
なぜ誤りか:
| 確認点 | 問題 |
|---|---|
| 目的・範囲 | 依頼の目的(関東の購入傾向)に不要な列(氏名・電話)と行(関東以外)を含む |
| 形式 | 集計で足りるのに個票を渡した |
| 方法 | チャットの添付は、社内規程で個人データの送付が禁止されていることが多く、転送やダウンロードを管理できない |
| 記録 | 誰に何を渡したか残らず、削除の求めに対応できない |
「社内」でも、利用目的の範囲・閲覧権限・社内規程の確認は必要です。
直し方:依頼者に目的を聞き、必要な粒度を確認します(多くの場合、集計で足ります)。個票が必要なら、列と行を絞り、規程で認められた方法(アクセス権を設定した共有フォルダなど)で渡し、共有の記録を台帳に残します。
失敗2:本番データベースだけ消して「削除完了」と報告する
誤った例:
「顧客Xさんのデータを顧客テーブルから削除しました。対応完了です。」
なぜ誤りか:同じデータが、分析環境の中間ファイル、過去に書き出したCSV、共有先、バックアップ、学習データに残っている可能性があります。本番だけ消すと、別の場所から復元されたり、次の分析で再び使われたりします。
| 場所 | 確認したか |
|---|---|
| 本番DB | した |
| 分析環境・中間ファイル | していない |
| メール・チャットの添付 | していない |
| 共有先・委託先 | していない |
| バックアップ | していない |
| 派生物(学習データ・モデル) | していない |
直し方:台帳の「保存場所」「共有先」をもとに削除範囲を洗い出し、場所ごとに対応と完了日を記録します。すぐに消せない場所(バックアップなど)は、いつまでに消えるかと、それまでの運用を記録して報告します。
失敗3:保存期間を決めずに「念のため永久保存」する
誤った例:「いつか分析に使うかもしれないので、キャンペーン応募者のデータは全部残しておきます。」
なぜ誤りか:
- 利用する必要がなくなった個人データは、遅滞なく消去するよう努めることが求められていると説明されています。
- 保存し続けるほど、漏えい時の被害と、管理の手間(アクセス権、削除の求めへの対応)が増えます。
- 「いつか使う」は、取得時の利用目的を超えた使い方につながりやすくなります。
直し方:データごとに保存期間と根拠を台帳に書きます。
| dataset | 保存期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| キャンペーン応募者 | 当選発表から6か月 | 業務上の必要(問い合わせ対応)。社内規程の保存期間表 |
| 取引記録 | 法令で定められた期間 | 法令(期間は経理・法務に確認) |
長期の分析に使いたいなら、個人が特定されない集計表を作って残し、個票は期限どおりに消す、という方法もあります。
まとめ
- 共有前の7点チェック:受け手・目的・範囲・形式・方法・契約条件・記録。集計で足りるなら集計を渡す。
- 共有の種類(社内・委託・第三者提供・一般公開)で必要な手続きが違う。社内でも確認は必要。
- 保存期間はデータごとに根拠(法令・契約・規程・業務上の必要)を書いて決める。無期限保存も、確認なしの即時削除も避ける。
- 削除は、本番・コピー・中間ファイル・バックアップ・派生物・共有先までを範囲とし、何を・いつ・どう消したか記録する。
- 学習済みモデルやバックアップは即時削除が難しいことがある。技術的な事実を正確に伝え、方針は担当部署と決める。
用語
- データライフサイクル(data lifecycle)
データの取得・利用・共有・保存・削除までの一連の流れ。段階ごとに確認点がある。
- データ台帳(data inventory)
データセットごとに、所有者・出所・目的・保存場所・共有先・保存期限などを記録した一覧。
- 保存期間(retention period)
データを保存しておく期間。法令・契約・規程・業務上の必要などの根拠に基づいて決める。
- 委託(outsourcing / entrustment)
自社の業務の一部を外部に任せること。委託先は委託の範囲内でのみデータを扱い、委託元は監督する。
- 派生物(derived data)
元のデータから作られた集計表・特徴量・学習済みモデルなど。削除や共有の範囲を考えるときに含める。
よくある質問
なぜ共有の記録まで残す必要があるのですか?
削除の求めや漏えいが起きたとき、「誰に何を渡したか」が分からないと対応できないからです。第三者提供については、提供の記録を作成・保存するルールがあると説明されています。社内の共有でも、記録があれば影響範囲をすぐ答えられます。
委託と第三者提供は、共有の手続きとして何が違いますか?
委託は自社の業務を任せるもので、委託先は委託の範囲内でしか使えず、委託元には監督が求められます。第三者提供は、受け手が自分の目的で使うために渡すもので、原則として本人の同意が問題になります。同じ「外部に渡す」でも、契約と手続きが大きく異なります。
匿名化すれば、自由に共有・保存できますか?
加工の程度によります。氏名を消しただけでは照合で個人が分かることがあり、法律上の匿名加工情報には所定の加工基準と手続きがあります。また、データの提供元との契約が加工後のデータの共有を制限していることもあります。「最小化と匿名化」(有料版) と 「匿名化と再識別」(有料版) で詳しく扱います。
クラウドにデータを置くとき、何に注意すればよいですか?
社内規程で認められたサービスか、アクセス権の設定(公開リンクになっていないか)、データの保存場所(国・地域)、サービスの利用規約(データの扱い)、退会時の削除です。設定ミスによる公開はよくある漏えいの原因なので、共有設定は必ず確認します。
研究データは、論文を書いたら削除してよいのですか?
研究データは、研究の再現性や不正の検証のために、一定期間の保存が所属機関の規程や研究費の条件で求められていることがあります。一方、参加者への説明で約束した保存期間や削除の条件もあります。両方を研究計画の段階で整理し、所属機関の担当部署に確認します。
仕事で共有の依頼を受けたら、どう判断すればよいですか?
7点チェック(受け手・目的・範囲・形式・方法・契約条件・記録)を順に確認します。目的が不明なら依頼者に聞き、集計で足りるなら集計を渡します。個票が必要で判断に迷う場合は、データの所有者と個人情報保護の担当部署に相談してから渡します。
確認問題
問1 他部署から「関東の顧客の購入傾向を知りたい」と依頼された。最初にすべきことはどれか。
- ① 目的と必要な粒度を確認し、集計で足りるなら集計表を渡す
- ② 全顧客・全列のデータをすぐに送る
- ③ 社内なので確認せずに個票を送る
- ④ 依頼を断る
解答と解説
正解:①
共有は最小化が原則です。目的を確認すれば、多くの場合、個票ではなく集計で足ります。
問2 データの保存期限について、最も適切な説明はどれか。
- ① 個人データは取得した翌日にすべて削除しなければならない
- ② いつか使うかもしれないので、すべて無期限に保存するのがよい
- ③ データごとに保存期間とその根拠(法令・契約・規程・業務上の必要)を決め、台帳に記録する
- ④ 保存期間は担当者の気分で決めてよい
解答と解説
正解:③
保存期間は根拠に基づいて決めます。法令で保存が求められる記録もあれば、不要になったら遅滞なく消去するよう努めるべき個人データもあります。
問3 顧客から削除の求めがあり、本番データベースから削除した。「削除完了」と言う前に確認すべきでないものはどれか。
- ① 分析環境の中間ファイルや書き出したCSV
- ② 共有先・委託先にあるコピー
- ③ バックアップと学習データ
- ④ その顧客が過去に好きだった商品の人気ランキング
解答と解説
正解:④
削除の範囲は、その顧客のデータのコピーや派生物がある場所です。個人と結びつかない商品の人気ランキングは、確認の対象ではありません。
問4 集計表を社外に共有するとき、人数1人のセルについて最も適切な扱いはどれか。
- ① 集計なのでそのまま共有する
- ② 社内基準に沿って非表示にするか区分をまとめ、個人の値が分からないようにする
- ③ 人数の列だけ消して金額は残す
- ④ 金額を1円単位で丸めれば問題ない
解答と解説
正解:②
人数1人のセルの合計や平均は、その人の値そのものです。非表示や区分の統合で対応します。
問5 退会者から削除の求めがあった。請求・支払いの記録の扱いとして最も適切なものはどれか。
- ① 削除の求めがあったので、確認せずにすぐ削除する
- ② 記録はすべて永久に保存し、本人には削除したと伝える
- ③ 削除の求めは無視する
- ④ 法令や契約で保存が求められる記録がないか担当部署に確認し、必要な期間は保存して、その理由を本人に伝える
解答と解説
正解:④
保存が求められる記録を勝手に消すと別の問題になります。確認したうえで、保存する理由と期間を正確に伝えます。
問6 学習済みモデルの学習データに含まれる人から削除の求めがあった。一般的な説明として最も適切なものはどれか。
- ① 学習データから消せば、モデルからも影響が自動的に消える
- ② モデルは数式なので、個人のデータとは一切関係がない
- ③ モデルには学習データの影響が残るため、再学習などの対応方針を担当部署と検討する。モデルがどのデータの版で学習されたか記録しておく
- ④ モデルを公開すれば削除の求めに対応したことになる
解答と解説
正解:③
学習済みモデルには学習データの影響が残ります。一般的な対応は、その人のデータを除いた再学習です。法律上の扱いには議論があるため、担当部署と方針を決めます。
次に学ぶこと
次は 公式情報の確認 で、法律・ガイドラインの公式情報を確認し、根拠と不確かさを記録する方法を学びます。
関連:保存・削除・利用目的のガバナンスは 「保存・削除・利用目的」(有料版)、保存と削除のセキュリティ面は 「保存と削除」(有料版)、漏えい時の対応は 「漏洩時の対応」(有料版)、「侵害と対応」(有料版) で扱います。
キャリア学習:データサイエンティスト・機械学習エンジニア・DX推進・研究者を目指す人の学習アプリ。164モジュール・984授業を、ブラウザで動くSQLとPythonの演習で。基礎と各分野の最初のモジュールは無料。全部は2,980円の買い切り。
アプリを無料で開く有料版と無料版の違い