研究計画の骨格|研究の問い・新規性・検証
このページはプロモーション(広告)を含みます。
研究の問い・新規性・検証(中級・読む30分+演習45分)
この授業のゴール
- 背景(既知)・未解決点・問い・仮説・新規性・方法・反証条件・限界・資源・倫理の10項目で研究計画の骨格を書ける
- 項目どうしのつながり(問いと指標、新規性と差分表、仮説と反証条件)が切れていないかを点検できる
- 実験条件の組み合わせ数と所要時間を掛け算で見積もり、計画が資源内に収まるかを判断できる
- 計画の中で、著者(先行研究)の主張・自分の解釈・これから確かめることを書き分けられる
仕事でどう使うか
研究計画は、研究の設計図です。ここまでの5つの授業で作った部品(問い・仮説・新規性・理論と実験・反証条件)を、1枚につなげます。計画があいまいなまま実験を始めると、途中で比較相手や指標を変えたくなり、結果の信頼性が失われます。
| 路線 | この授業の使いどころ |
|---|---|
| DS(データサイエンティスト) | 分析計画書(目的・問い・指標・判断基準・データ・日程・リスク)を、分析を始める前に依頼者と合意する |
| ML(機械学習エンジニア) | 実験計画(比較するモデル・データ分割・乱数・計算時間の見積もり・採用基準)を書き、計算資源の申請や優先順位の判断に使う |
| DX(DX推進・AI企画) | PoC計画書(目的・成功条件・中止条件・期間・体制・データの取り扱い)を作り、経営や現場の承認を得る |
| RS(研究者) | 研究室の計画発表、学位論文の研究計画、研究費の申請書の土台にする。形式は所属先や制度で異なるが、骨格は共通 |
前提
モジュールの総まとめとして、次の内容を使います。
- 研究と実務分析、既知・未解決・自分の解釈 → 研究と実務分析
- 問い・仮説・判断基準 → 問いと仮説
- 新規性の種類と差分表 → 新規性の種類
- 理論と実験 → 理論と実験
- 反証条件と反例 → 反証と反例
- データ取得・同意・共有のルール → 同意とデータ取得
ケースは引き続き、架空の青井研究室の森さんと、架空の食品スーパー「みなと屋」です。
身近な状況:部品はそろったが、つながっていない
森さんは、来月の研究室の計画発表に向けて、これまでのメモを集めました。
- 研究と実務分析:既知(文献P・Qの報告)と未解決(類似度の低い商品)の整理
- 問いと仮説:問いと仮説(履歴4週以下で、相対削減率の平均10%以上)
- 新規性の種類:差分表と新規性の文(検証と知見)
- 理論と実験:逆転点の理論 $n^* = \sigma^2/\Delta^2$ とシミュレーション
- 反証と反例:8品目の反例(類似度0.5以下で悪化)と、新しい仮説
青井先生はメモを読んで言いました。「部品はいい。でも、つながっていない。L02の仮説は『履歴4週以下で10%以上』なのに、L05で否定されて『類似度0.6以上』に変わった。新規性の文は『類似度の低い商品を含める』なのに、仮説は類似度の高い商品だけ。どれが今の計画なのか、1枚で見せてほしい。それから、実験は何回やって、どのくらい時間がかかるの?」
直感的な説明:計画は「問いから結論までの1本の道」
研究計画の骨格は、問いから結論までの1本の道です。道のどこかが切れていると、実験をしても問いに答えられません。
既知(ここまでは分かっている)→ 未解決(ここが分からない)→ 問い(だからこれを問う)→ 仮説(たぶんこうなる)→ 方法(こうやって確かめる)→ 反証条件(こうなったら仮説は誤り)→ 結論の範囲(ここまでは言える)
つながりを点検する簡単な方法は、隣り合う項目のあいだで「だから」「そのために」と言えるかを確かめることです。
- 「類似度の低い商品での効果は未解決だ。だから、類似度別に効果を問う。」→ つながっている
- 「類似度の低い商品での効果は未解決だ。だから、最新のモデルで精度を上げる。」→ 切れている
もう1つ大切なのは、計画にはうまくいかなかった場合も書くことです。反証条件・失敗条件・限界・代替案があれば、どんな結果でも研究が前に進みます。
注意:計画は「必ずこの通りに進める約束」ではありません。途中で変えてよいのです。ただし、変えたときは日付・変更内容・理由を記録し、事前の計画で確かめた結果と、変更後に確かめた結果を区別して報告します。
正確な定義:研究計画の骨格10項目
この授業では、研究計画の骨格を次の10項目と定義します。
| # | 項目 | 書くこと | 点検の問い |
|---|---|---|---|
| 1 | 背景と既知 | 先行研究が何を、どの条件で示したか(著者の主張として、出典つき) | 著者の主張と自分の解釈を分けたか |
| 2 | 未解決点 | 既知の範囲で分かっていないこと。調べた範囲 | 「自分が知らない」と混同していないか |
| 3 | 問い | 対象・条件・比較・指標・判断基準 | 答え合わせの方法が決まっているか |
| 4 | 仮説 | 問いへの予想の答え。理論的な根拠があれば添える | 否定され得る形か |
| 5 | 新規性 | 最も近い既存研究との差分と種類 | 誇張表現がないか。差分表があるか |
| 6 | 方法 | 理論・シミュレーション・実データ実験の役割、比較相手、データ分割、試行回数 | 問いの指標と方法の指標が一致しているか |
| 7 | 反証条件と失敗条件 | 仮説が否定される結果(数値)。失敗しそうな条件を比較に含めるか | 結果を見る前に決めたか |
| 8 | 限界と結論の範囲 | 言えること・言えないこと。代替計画 | 範囲を越えた一般化をしていないか |
| 9 | 資源と日程 | 実験回数×1回の時間、データ準備、執筆の期間 | 掛け算で見積もったか。余裕があるか |
| 10 | 倫理とデータ | データの権利・契約・個人情報・公開の可否 | 公開前に確認すべき人・規程が分かっているか |
主張の種類の書き分け:計画書では、次の3つが混ざりやすいので、文末で区別します。
| 種類 | 文末の例 |
|---|---|
| 先行研究の主張(既知) | 「文献Qは〜と報告している」 |
| 自分の解釈・予想 | 「〜と考える」「〜と予想する」 |
| これから確かめること | 「〜かを検証する」「〜を明らかにすることを目指す」 |
計画の段階で「〜を示した」「〜が明らかになった」と書くのは誤りです。まだ確かめていないからです。
実験回数の見積もり:条件の組み合わせは、各条件の数の掛け算です。データセット $D$ 個、方法 $M$ 個、乱数 $S$ 個なら、実験回数は $D \times M \times S$ 回、所要時間は $D \times M \times S \times t$($t$ は1回あたりの時間)です。例えば $D=3$、$M=4$、$S=5$、$t=12$ 分なら、$3 \times 4 \times 5 = 60$ 回、$60 \times 12 = 720$ 分=12時間です。やり直しに備えて、見積もりの1.5倍程度の余裕を持つと安全です。
段階付き例題:森さんの計画を1枚にする
入力:L01〜L05のメモと、青井先生の指摘。
ステップ1:今の問いを1つに決める。L05で、類似度が効果を左右することが分かりました。今の問いは「履歴4週以下の新商品で、類似商品の平均を混ぜる予測は、どの類似度・履歴の条件で基準法よりMAEが小さくなるか」です。L02の問いは「最初の計画」として記録に残します。
ステップ2:骨格を埋める。
| 項目 | 森さんの計画(要約) |
|---|---|
| 1 背景と既知 | 文献P・Qは、類似度の高い新商品で、類似商品の平均を混ぜるとMAEが下がったと報告している |
| 2 未解決点 | 類似度の低い商品での効果は、検索で見つかった12件では分析されていない |
| 3 問い | ステップ1の問い。指標は翌週販売数のMAE、判断基準は相対削減率 |
| 4 仮説 | 類似度0.6以上では相対削減率の平均が10%以上、0.5以下では基準法より悪化する(理論:ずれ $\Delta$ が大きいほど逆転点 $n^*$ が早い、と予想する) |
| 5 新規性 | 類似度の低い商品を含めた、文献P・Qの方法との同条件比較(検証)と、悪化条件の特定を目指す(知見) |
| 6 方法 | ①理論:逆転点の式(MSEとMAEの両方で導く)②シミュレーション:導出の確認 ③実データ:2026年発売の新商品45品目(類似度の帯ごとに15品目)、方法5種、履歴4段階。L05の8品目は使わない |
| 7 反証条件 | 類似度0.6以上で平均10%未満、または悪化する品目が10%超なら仮説4の前半は誤り。0.5以下で悪化しなければ後半は誤り |
| 8 限界 | みなと屋1社・食品のみ。他業種への一般化は未確認。品目数が少なく、差が小さい条件では判断できない可能性 |
| 9 資源と日程 | 評価は計算上数分。データ整備4週、実験2週、分析と執筆4週。新商品が45品目集まらない場合は、2025年発売分で類似度の低い品目を追加する(代替計画) |
| 10 倫理とデータ | みなと屋との共同研究契約で、商品名を伏せた集計結果の公開に合意。個人の購買データは使わない |
ステップ3:つながりを点検する。「未解決は類似度の低い商品 → だから問いは類似度別 → そのために類似度の帯ごとに15品目 → 反証条件も類似度別」と、1本の道になりました。仮説4の後半(0.5以下で悪化)は、失敗条件を仮説として明示したものです。
出力の意味:この1枚で、何を確かめ、どうなったら仮説を捨て、どこまで言えるかが誰にでも分かります。文末も「報告している」(既知)、「予想する」(解釈)、「目指す」(これから確かめること)と書き分けています。
操作して理解する:実験数の見積もりと計画の点検
下のコードは、(1) 森さんの実験条件の組み合わせ数と評価回数を掛け算で求め、(2) 計画の骨格の辞書から、未記入の項目と、誇張・検証不能の疑いがある語を探します。itertools.product(a, b, c) は、3つのリストのすべての組み合わせを作る関数です。dict.get(k, '') は、キー k がなければ空文字を返します。
from itertools import product
# (1) 実験の条件を掛け算で数える
sim_bands = ['低(0.2-0.5)', '中(0.5-0.7)', '高(0.7-0.9)']
weeks = [1, 2, 4, 8]
methods = ['基準法', '文献P', '文献Q', '提案法', '提案法(類似度なし)']
cells = list(product(sim_bands, weeks, methods))
items_per_band = 15 # 類似度の帯ごとの新商品数
evals = len(sim_bands) * items_per_band * len(weeks) * len(methods)
print('条件の組み合わせ数:', len(cells))
print('評価の回数:', evals, '回 / 1回0.2秒なら', evals * 0.2 / 60, '分')
# (2) 計画の骨格の抜け漏れと、誇張・検証不能な語を点検する
plan = {
'背景と既知': '文献P・Qは類似度の高い新商品で、類似商品の平均を混ぜるとMAEが下がると報告。',
'未解決点': '類似度の低い商品での効果は未分析(検索範囲は計画書の付録に記録)。',
'問い': '履歴4週以下の新商品で、提案法はどの類似度・履歴の条件で基準法よりMAEが小さいか。',
'仮説': '類似度0.6以上では相対削減率の平均が10%以上。提案法は常に文献Qより良い。',
'新規性': '類似度の低い商品を含めた同条件比較(検証)と、悪化条件の特定(知見)。',
'方法': '理論で逆転点を予想し、シミュレーションと実データで適切に検証する。',
'反証条件': '',
'資源と日程': '評価は数分。データ整備に4週、実験に2週、執筆に4週。',
'倫理とデータ': 'みなと屋との契約で、商品名を伏せて結果を公開することに合意済み。',
}
required = ['背景と既知', '未解決点', '問い', '仮説', '新規性', '方法', '反証条件', '限界', '資源と日程', '倫理とデータ']
banned = ['初めて', '常に', '適切に', '大幅に', '画期的']
for k in required:
if not plan.get(k, '').strip(): # 項目がない、または空
print('未記入:', k)
for k, v in plan.items():
for word in banned:
if word in v:
print(f'要確認: 「{k}」に「{word}」')
出力:
条件の組み合わせ数: 60
評価の回数: 900 回 / 1回0.2秒なら 3.0 分
未記入: 反証条件
未記入: 限界
要確認: 「仮説」に「常に」
要確認: 「方法」に「適切に」
読み方:
- 条件の組み合わせは $3 \times 4 \times 5 = 60$、評価回数は品目数も掛けて $45 \times 4 \times 5 = 900$ 回です。計算時間は問題になりません。この研究で時間がかかるのはデータ整備のほうだと分かります。
- 「反証条件」が空、「限界」がそもそもありません。この2つは、うまくいかなかったときに研究を前に進めるための項目です。
- 仮説の「提案法は常に文献Qより良い」は、反例1つで崩れる全称の主張で、しかも根拠がありません。方法の「適切に検証する」は、何をするか分かりません。
試してみましょう:plan の '反証条件' に文を入れ、'限界' の項目を追加し、'常に' と '適切に' を書き直して、出力が組み合わせ数と評価回数の2行だけになるまで直してください。
注意:このコードは、語の有無を機械的に調べるだけです。「常に」がなくても、「どの商品でも成り立つ」のように別の言い方で誇張していることもあります。最終的な点検は、人が「だから」「そのために」でつながりを読んで行います。
発展:正式な計画書、倫理審査、計画変更の記録
正式な研究計画書との関係:学位の研究計画や研究費の申請書には、決められた様式・字数・審査の観点があります。項目名は異なっても、中身(既知と未解決、問い、方法、意義、実現可能性、倫理)はほぼ共通です。様式や締め切りは制度・年度・所属先で変わるため、ここでは執筆時点(2026年)の一般的な説明にとどめます。実際には公式の募集要項や学内規程で確認してください(「研究計画と節目」(有料版)、「申請と不採択時の計画」(有料版))。
倫理審査とデータの権利:人を対象とする研究では、多くの大学・研究機関で倫理審査委員会の承認が必要です。企業のデータを使う場合は、契約で利用目的・公開範囲・成果の扱いを決めます。どちらも実験を始める前に確認します。データを取ってから承認を得ることはできません(個人情報と利用目的、「研究倫理と不正」(有料版))。
計画変更の記録:計画を変えたら、記録を残します。
| 日付 | 変更内容 | 理由 | 変更前のデータで結果を見たか |
|---|---|---|---|
| 2026年◯月◯日 | 仮説を「履歴4週以下で10%以上」から「類似度別」に変更 | 8品目の評価で類似度が低い品目が悪化(L05) | 見た(したがって新しいデータで検証) |
最後の列が特に重要です。
よくある失敗
失敗1:問いの指標と方法の指標がずれている
誤った例:問いでは「翌週販売数のMAEを小さくするか」と書いたのに、方法の節では「MAPE(平均絶対パーセント誤差)で比較する」と書いている。
なぜ誤りか:MAPEは誤差を実績で割るので、販売数が少ない商品の誤差が大きく効きます。同じ実験でも、MAEとMAPEで結論が変わることがあります(理論と実験 の発展でも、指標で逆転点が変わりました)。指標がずれていると、実験しても問いに答えたことになりません。
直し方:問い・仮説・判断基準・方法・反証条件のすべてで、同じ指標名と定義を使います。補助的に別の指標も見るなら、「主要指標:MAE、補助指標:MAPE」と明記します。
失敗2:実験回数を足し算で見積もる
誤った計算:データセット3、方法4、乱数5なので、実験は $3 + 4 + 5 = 12$ 回。1回12分なら $12 \times 12 = 144$ 分、2時間半で終わる、と見積もった。
正しい計算:すべての組み合わせを試すので掛け算です。
$$3 \times 4 \times 5 = 60 \text{ 回}, \quad 60 \times 12 = 720 \text{ 分} = 12 \text{ 時間}$$
やり直しの余裕を1.5倍とると、18時間です。
なぜ問題か:見積もりが5分の1になっていたので、計算機の予約や日程が足りなくなり、途中で乱数の数を減らすなど、比較の質を下げることになります。
直し方:条件のリストを書き出し、掛け算で数えます。コードの itertools.product で全組み合わせを作れば、数え間違いを防げます。
失敗3:うまくいく場合しか書かれていない
誤った例:計画の「期待される成果」に「提案法により新商品の予測誤差が改善し、みなと屋の廃棄が減ることを示す」とだけ書き、反証条件・限界・代替計画の欄がない。
なぜ誤りか:結果が出る前に成果を断定しています(「示す」)。仮説が否定された場合に何が分かるのか、何をするのかが決まっていないため、否定的な結果が出たときに、基準を動かしたり、品目を除外したりする誘惑が強くなります。また、廃棄の削減は予測誤差の改善とは別の指標で、この計画では測っていません。
直し方:
「仮説が支持された場合:類似度0.6以上の新商品で、類似商品の情報を使う根拠が得られる。支持されなかった場合:類似商品の情報が役立たない条件を、否定的結果として報告する。いずれの場合も、廃棄量への影響は本研究の範囲外とし、次の研究課題とする。」
失敗4:先行研究の主張と自分の予想を、背景に混ぜて書く
誤った例(背景の節):「類似商品の情報を混ぜる方法は、類似度が低いと逆効果になることが知られている(文献P、文献Q)。」
なぜ誤りか:文献P・Qが報告したのは「類似度の高い商品でMAEが下がった」ことで、類似度の低い商品は対象外・未分析でした。「逆効果になる」は森さんの予想と、8品目の探索的な結果です。これを既知として書くと、(1)引用の誤り、(2)未解決点がなくなり研究の意義が消える、という2つの問題が生じます。
直し方:
「文献P・Qは、類似度の高い商品で、類似商品の平均を混ぜるとMAEが下がったと報告している。類似度の低い商品は対象外または未分析である。予備的な評価(8品目)では類似度0.5以下の3品目で悪化が見られ、本研究ではこれを新しいデータで検証する。」
まとめ
- 研究計画の骨格は10項目:背景と既知、未解決点、問い、仮説、新規性、方法、反証条件と失敗条件、限界、資源と日程、倫理とデータ。
- 隣り合う項目を「だから」「そのために」でつなぎ、問い・仮説・方法・反証条件で同じ指標と対象を使う。
- 先行研究の主張(報告している)、自分の予想(予想する)、これから確かめること(検証する・目指す)を文末で書き分ける。計画段階で「示した」と書かない。
- 実験回数は条件の掛け算で見積もり、余裕を持たせる。計画変更は日付・内容・理由と、結果を見たかどうかを記録する。
用語
- 研究計画の骨格(research plan outline)
問いから結論の範囲までをつなぐ、研究計画の最小限の項目の組。この授業では10項目。
- 代替計画(contingency plan)
データが集まらない、仮説が早期に否定されたなど、計画どおりに進まない場合の進め方を事前に決めたもの。
- 倫理審査(ethics review)
人を対象とする研究などで、実施前に研究機関の委員会が計画の倫理的な妥当性を確認する手続き。
- 実験台帳(experiment log)
計画した全条件の実験を、成功・失敗にかかわらず日時・設定・結果とともに記録する台帳。
- 主要指標(primary outcome)
仮説の判断に使う、事前に1つ決めた指標。補助的に見る指標(補助指標)と区別する。
よくある質問
研究計画は、どのくらいの長さで書けばよいですか?
最初は、この授業の10項目を1枚(A4で1〜2ページ程度)にまとめるのがおすすめです。1枚に収まらないのは、問いが広すぎるか、部品のつながりが整理できていないサインです。正式な計画書や申請書は、決められた様式と字数に合わせて、この骨格を肉付けします。
まだ先行研究を十分に読めていません。計画は書けますか?
書けます。むしろ、骨格を書くと「背景と既知」「未解決点」が埋まらないことに気づき、何を読むべきかが分かります。現時点で調べた範囲を書き、「未確認」の部分を明記しておきます。文献の探し方は 「キーワードと探索」(有料版) で学びます。
実務の分析計画書と、研究計画の違いは何ですか?
骨格はほぼ同じです。違いは、研究では「未解決点」と「新規性」が中心になり、結論の範囲を一般化したい範囲まで考える点です。実務の計画書では、代わりに「どの判断に使うか」「期限」「関係者」が中心になります。どちらも、問い・指標・判断基準・中止条件を事前に決める点は共通です。
計画どおりに進まなかったら、どうすればよいですか?
まず、変更の記録(日付・内容・理由)を残します。次に、計画に書いた代替案を使います。代替案がなければ、範囲を縮める(品目数を減らす、条件を減らす)か、得られた部分を否定的結果や予備的結果としてまとめます。指導教員や共同研究者に早めに相談することが大切です(「進路と代替計画」(有料版))。
倫理やデータの項目は、どんな研究でも必要ですか?
必要です。公開データだけを使う研究でも、ライセンス(再配布や商用利用の可否)の確認が要ります。人のデータや企業のデータを使う場合は、倫理審査、同意、契約の確認を、実験を始める前に済ませます。後から問題が見つかると、研究成果を公開できなくなることがあります。
計画の良し悪しを、自分で判断する方法はありますか?
3つの点検をします。(1)隣り合う項目のあいだで「だから」「そのために」と言えるか、(2)「初めて」「常に」「適切に」など、誇張・検証不能な語がないか、(3)仮説が否定された場合に何が分かり、何をするかが書かれているか。そのうえで、研究室の仲間に読んでもらい、「何を確かめる研究か」を1文で言い直してもらうと、伝わっているかが分かります。
確認問題
問1 研究計画の骨格で、「問い」と「方法」のつながりを点検する方法として最も適切なものはどれか。
- ① 方法の節が長ければつながっている
- ② 問いの指標・対象と、方法で使う指標・データが一致しているかを確かめる
- ③ 新しい道具を使っていればつながっている
- ④ 方法は結果を見てから決めればよい
解答と解説
正解:②
問いでMAEを問うなら、方法でもMAEで比べます。対象(履歴4週以下など)も一致させます。
問2 データセット4種類、方法3種類、乱数5種類ですべての組み合わせを実験する。1回10分のとき、余裕を含めない所要時間は何時間か。
- ① 2時間
- ② 約3.3時間
- ③ 10時間
- ④ 60時間
解答と解説
正解:③
4×3×5=60回、60×10=600分=10時間です。
問3 研究計画の段階で、新規性の文の書き方として最も適切なものはどれか。
- ① 本研究は、類似度の低い商品を含めた同条件比較により、悪化する条件の特定を目指す
- ② 本研究は、類似度の低い商品で提案法が悪化することを示した
- ③ 本研究は、提案法が常に既存手法より優れることを明らかにする
- ④ 本研究は、最先端の手法を用いる
解答と解説
正解:①
計画段階ではまだ確かめていないので、「目指す」「検証する」と書きます。
問4 研究の途中で、8品目の結果を見て仮説を「類似度別」に変更した。計画変更の扱いとして正しいものはどれか。
- ① 最初から類似度別の仮説だったように計画書を書き直す
- ② 変更後の仮説を、同じ8品目で検証して報告する
- ③ 計画は変更してはいけないので、元の仮説のまま進める
- ④ 変更の日付・内容・理由と、変更前のデータで結果を見たことを記録し、新しい仮説は新しいデータで検証する
解答と解説
正解:④
計画変更は自然なことですが、記録を残し、結果を見て作った仮説は別のデータで確かめます。
問5 計画書の背景に「類似度が低いと逆効果になることが知られている(文献P、文献Q)」と書いた。文献P・Qは類似度の高い商品だけを調べていた。この記述の問題はどれか。
- ① 出典が2つあるので問題はない
- ② 自分の予想や予備的な結果を、先行研究の既知の主張として書いている
- ③ 文献を2つも引用するのは多すぎる
- ④ 「逆効果」という言葉が難しい
解答と解説
正解:②
文献P・Qが報告していないことを、彼らの主張として書いています。引用の誤りであり、未解決点も消えてしまいます。
問6 計画書に「うまくいかなかった場合」を書く理由として、最も適切なものはどれか。
- ① 審査員に謙虚な印象を与えるため
- ② 失敗する研究のほうが評価されるため
- ③ 反証条件や代替計画を事前に決めておくと、否定的な結果が出ても基準を動かさずに研究を前に進められるため
- ④ 書く欄があるので埋めるため
解答と解説
正解:③
結果が出る前に失敗時の扱いを決めておくと、後付けの救済を防ぎ、否定的結果も知見として報告できます。
次に学ぶこと
これでモジュール RS01 の6授業は終わりです。総合テストと自力課題で、自作の研究ケースから主張と未解決点を整理できるかを確かめましょう。この授業の確認問題だけでモジュールの習得とはしません。
次は 文献検索・読解・レビュー(有料版)(文献検索・読解・レビュー)で、計画の「背景と既知」「未解決点」を支える文献の探し方と読み方を学びます。実験の比較・記録の詳細は 再現実験・比較・アブレーション(有料版)、研究計画と節目の管理は 「研究計画と節目」(有料版) で扱います。
キャリア学習:データサイエンティスト・機械学習エンジニア・DX推進・研究者を目指す人の学習アプリ。164モジュール・984授業を、ブラウザで動くSQLとPythonの演習で。基礎と各分野の最初のモジュールは無料。全部は2,980円の買い切り。
アプリを無料で開く有料版と無料版の違い