記述と確率|統計検定2級の体系とオリジナル演習
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統計検定2級の体系とオリジナル演習(中級・読む30分+演習35分)
この授業のゴール
- 小さなデータから平均・中央値・分散(n と n−1 の区別つき)・標準化得点・変動係数を電卓で求め、選択肢の誤りの原因を言える
- 複数期間の成長率を幾何平均でまとめ、算術平均との違いを数値で示せる
- 条件付き確率とベイズの定理を表に直して計算し、$P(A\mid B)$ と $P(B\mid A)$ の取り違えを見抜ける
- 確率変数の1次式・和の期待値と分散を求め、標本調査法とフィッシャーの3原則の名前を目的と結びつけて説明できる
仕事でどう使うか
記述統計と確率は、統計検定2級の範囲の前半にあたり、後半の推定・検定・回帰の土台になります(範囲の確認は 対象範囲と項目対応)。ここでの計算ミスや取り違えは、実務でもそのまま報告の誤りになります。
| 路線 | この授業の内容が使われる成果物・意思決定 |
|---|---|
| DS | 月次レポートの成長率(幾何平均)、部署間のばらつき比較(変動係数)、外れ値の多い指標で平均と中央値のどちらを出すか |
| ML | 検出モデルの陽性的中率(ベイズの定理)。有病率が低いと、精度が高くても陽性の多くが誤検知になる |
| DX | 「検査で陽性=不良」と決めつけた運用ルールの見直し、アンケートの抽出方法の選択 |
| RS | 実験計画の方法の節(反復・無作為化・局所管理)、記述統計表の n−1 の明記 |
この授業は、内蔵授業の内容を試験で問われる形に並べ直した総整理です。各節の最後に「戻り先」を書きます。
確認日と出典:この授業の試験情報は、2026年10月(10月11日)に統計検定の公式サイトで確認した内容です。
- 統計検定2級のページ:https://www.toukei-kentei.jp/grade/grade2/
- 試験概要のページ:https://www.toukei-kentei.jp/about/summary
- 統計検定2級 出題範囲表(PDF):https://www.toukei-kentei.jp/hubfs/files/grade_range/grade2_hani_20181214.pdf
- 出題範囲表の改訂のお知らせ:https://www.toukei-kentei.jp/news/post-8545試験の方式・範囲・合格水準は変わることがあります。受験前に必ず公式サイトの最新情報で確認してください。
前提
次の内容を一度学んでいることを前提にします。
- 代表値と散らばり(分散・標準偏差)→ 代表値と散らばり、外れ値と頑健性 → 外れ値と頑健性
- 増減率と指数 → 指数と増減率
- 条件付き確率 → 「条件付き確率」(有料版)、独立 → 「独立と条件付き独立」(有料版)、ベイズの定理 → 「ベイズの定理」(有料版)、ベースレート → 「検査・分類のベースレート」(有料版)
- 期待値と分散 → 「期待値と分散」(有料版)、二項分布 → 「ベルヌーイ・二項・ポアソン」(有料版)、相関 → 「共分散と相関」(有料版)
- 抽出設計 → 「抽出設計と選択バイアス」(有料版)、無作為化 → 「無作為化」(有料版)、ブロック化 → 「ブロック化・層別化」(有料版)
記号:$\bar{x}$ は標本平均、$s^2$ は不偏分散(n−1で割る分散)、$E[X]$ は期待値、$V[X]$ は分散です。
身近な状況:同じデータから3つの「分散」が出てくる
ある店舗の5日間の返品件数が 4, 6, 6, 8, 11 件でした。3人が「ばらつき」を計算したところ、答えがそろいませんでした。
| 人 | 答え | 計算 |
|---|---|---|
| Dさん | 5.6 | 偏差の2乗和 28 を n=5 で割った |
| Eさん | 7.0 | 偏差の2乗和 28 を n−1=4 で割った |
| Fさん | 2.65 | 7.0 の平方根(標準偏差)を答えた |
3人とも計算は合っています。違うのは何を求めたかです。試験の選択肢には、このように「計算は正しいが、求める量が違う」値が並ぶことがよくあります。問題文が「分散」「不偏分散」「標本標準偏差」のどれを求めているか、どちらの定義を使うと書いてあるかを読まずに計算を始めると、正しく計算したのに失点します。
確率でも同じことが起きます。「不良品のうち検査で陽性になる割合」と「検査で陽性になったもののうち不良品の割合」は、言葉が似ていても値はまったく違います。この授業では、求める量を言葉で確定してから計算する習慣を、記述と確率の代表的な問題で練習します。
直感的な説明:記述は「要約」、確率は「表の割り算」
記述統計は、データを少数の数値に要約する作業です。要約には必ず情報の損失があるので、「何を残し、何を捨てたか」を意識します。
- 平均は合計を残す要約、中央値は順位を残す要約です。外れ値が1つあると平均は動き、中央値はほとんど動きません。
- 分散・標準偏差は「平均からの離れ具合」、変動係数は「平均に対する相対的な離れ具合」です。
- 成長率は掛け算で積み重なるので、まとめるときも掛け算(幾何平均)を使います。
確率の問題の多くは、人数の表(分割表)に直して割り算すると迷いません。例えば「1万人のうち…」と仮の人数を置き、各セルの人数を埋めます。「〜のうち」の後ろに来る集団が分母です。条件付き確率の取り違えは、ほとんどが分母の取り違えです。
たとえ話の限界:「人数の表」は離散的な事象の確率には便利ですが、連続分布の確率(正規分布の面積など)は表の割り算では求められません。その場合は分布の表(数値表)を使います(解く順序と計算)。
正確な定義:試験で使う式と条件の一覧
1. 代表値と散らばり(データ $x_1, \dots, x_n$)
$$\bar{x} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n} x_i, \qquad S_{xx} = \sum_{i=1}^{n}(x_i - \bar{x})^2$$
$S_{xx}$ は偏差平方和(単位は元の単位の2乗)です。$S_{xx}/n$ を標本分散、$S_{xx}/(n-1)$ を不偏分散 $s^2$ と呼ぶ流儀が一般的ですが、教科書によって呼び名が違うので、問題文の定義を優先します。標準偏差はその平方根で、元の単位に戻ります。
2. 標準化と変動係数:$z = (x - \bar{x})/s$ は「平均から標準偏差何個分離れているか」(単位なし)。変動係数 $CV = s/\bar{x}$ は平均が正の量で、平均の大きさが違う集団のばらつきを比べるときに使います(単位なし)。
3. 歪度と尖度:歪度(わいど)は分布の左右の偏りを表し、右に裾が長い(大きい値の側に外れ値がある)と正になります。このとき一般に平均が中央値より大きくなります。尖度(せんど)は裾の重さ・とがり具合を表し、正規分布を基準に3を引いた「超過尖度」で表すことも多いので、どちらの定義かを確認します。
4. 成長率の平均:期間ごとの成長率 $r_1, \dots, r_k$ をまとめた1期あたりの平均成長率は
$$\bar{r}_G = \left(\prod_{t=1}^{k}(1 + r_t)\right)^{1/k} - 1$$
です($\prod$ は掛け算の記号。総和と総乗の記号)。移動平均は、季節などの周期的な変動をならして傾向を見る方法です(「トレンド・季節性・定常性」(有料版))。
5. 確率:$P(A \mid B) = P(A \cap B)/P(B)$($P(B)>0$)。ベイズの定理は
$$P(A \mid B) = \frac{P(B \mid A)P(A)}{P(B \mid A)P(A) + P(B \mid A^c)P(A^c)}$$
で、$A^c$ は「A でない」事象です。$A$ と $B$ が独立とは $P(A \cap B) = P(A)P(B)$ が成り立つことです。
6. 期待値と分散($a, b$ は定数):$E[aX+b] = aE[X]+b$、$V[aX+b] = a^2V[X]$。$X, Y$ が独立なら $V[X \pm Y] = V[X] + V[Y]$(引き算でも足す)。二項分布 $B(n,p)$ は $E=np$、$V=np(1-p)$。
7. データ収集法の用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 単純無作為抽出 | 母集団の全員が等しい確率で選ばれる |
| 層化抽出 | 母集団を層(性別・地域など)に分け、各層から無作為に抽出する |
| 集落(クラスター)抽出 | 学校・店舗などの集団を単位に無作為に選び、選んだ集団の全員を調べる |
| 系統抽出 | 名簿から一定間隔(例:10人おき)で選ぶ。名簿の並びに周期があると偏る |
| 多段抽出 | 市区町村→世帯のように段階的に抽出する |
| フィッシャーの3原則 | 実験計画の原則:反復(同じ処理を複数回)、無作為化(処理の割り付けをランダムに)、局所管理(条件の似たブロック内で比較) |
疑似相関は、2つの変数に共通の原因(交絡因子)があるために、因果関係がないのに相関が現れることです(「DAGと交絡」(有料版))。
段階付き例題:記述・成長率・ベイズを1問ずつ
例題1(記述):返品件数 4, 6, 6, 8, 11 の平均・中央値・不偏分散・標準偏差。
- 入力:n=5、合計35。
- 処理:$\bar{x}=35/5=7$。並べ替えると中央(3番目)は6。偏差は $-3,-1,-1,1,4$、2乗は $9,1,1,1,16$ で $S_{xx}=28$。不偏分散 $s^2=28/4=7.0$、標準偏差 $s=\sqrt{7}\approx 2.646$ 件。
- 出力と意味:平均7件 > 中央値6件。11件の日が平均を引き上げており、右に裾が長い(歪度が正)分布です。
例題2(標準化と変動係数):試験の点数80点、平均65点、標準偏差10点なら $z=(80-65)/10=1.5$。平均の1.5標準偏差上です。製品Aの重さが平均50g・標準偏差5g、製品Bが平均200g・標準偏差12gなら、$CV_A=5/50=0.10$、$CV_B=12/200=0.06$。標準偏差はBが大きいのに、相対的なばらつきはAが大きいと読みます。
例題3(成長率):売上が 100 → 120 → 90(万円)と動いた。成長率は +20%、−25%。
- 誤り:算術平均 $(20-25)/2=-2.5\%$。この率で2期進めると $100\times0.975^2\approx 95.06$ で、実際の90と合いません。
- 正解:$\bar{r}_G=\sqrt{1.2\times0.75}-1=\sqrt{0.9}-1\approx-0.0513$、つまり 1期あたり約 −5.13%。$100\times0.9487^2\approx 90$ で一致します。
例題4(ベイズ):ある不良の発生率2%、検査は不良品の90%を陽性と判定し、良品の5%を誤って陽性と判定する。陽性と出た製品が本当に不良である確率は?
10,000個と置いて表を作ります。
| 陽性 | 陰性 | 計 | |
|---|---|---|---|
| 不良 | 180 | 20 | 200 |
| 良品 | 490 | 9,310 | 9,800 |
| 計 | 670 | 9,330 | 10,000 |
求めるのは「陽性のうち不良」なので分母は陽性の670。$180/670\approx 0.269$、約26.9%です。「90%」と答えるのは $P(\text{陽性}\mid\text{不良})$ と取り違えた誤答、「2%」は事前確率のままの誤答です。発生率が低いと、陽性の大半は良品の誤検知になります(「検査・分類のベースレート」(有料版))。
例題5(期待値と分散):不良率0.3の工程から10個取り出したときの不良数 $X\sim B(10, 0.3)$。$E[X]=3$、$V[X]=10\times0.3\times0.7=2.1$。不良が0個の確率は $0.7^{10}\approx0.028$ です。
操作して理解する:値を変えて、選択肢の誤答を再現する
次のコードで例題の値を確かめ、条件を変えて結果がどう動くかを観察します。np.var(x, ddof=1) の ddof(delta degrees of freedom)は分母を n - ddof にする引数で、ddof=0 なら n、ddof=1 なら n−1 で割ります。戻り値は float(小数)です。
import numpy as np
from scipy import stats
x = np.array([4, 6, 6, 8, 11], dtype=float)
print("平均", x.mean(), "中央値", np.median(x))
print("n で割る分散", x.var(ddof=0), " n-1 で割る分散", x.var(ddof=1))
print("標準偏差(n-1)", round(x.std(ddof=1), 3))
print("歪度", round(stats.skew(x), 3), " 超過尖度", round(stats.kurtosis(x), 3))
# 成長率: 算術平均と幾何平均
g = np.array([1.20, 0.75])
print("算術平均の率", round(g.mean() - 1, 4), " 幾何平均の率", round(g.prod() ** (1/len(g)) - 1, 4))
# ベイズ: 発生率を変えると陽性的中率がどう動くか
for prev in [0.02, 0.10, 0.50]:
sens, fpr = 0.90, 0.05
ppv = sens*prev / (sens*prev + fpr*(1-prev))
print(f"発生率 {prev:.0%} -> 陽性のうち不良 {ppv:.1%}")
出力の要点:分散は 5.6(n)と 7.0(n−1)、標準偏差2.646、歪度は約0.543(正=右に裾)、超過尖度は約−0.832。成長率は算術 −0.025、幾何 −0.0513。陽性的中率は、発生率2%で26.9%、10%で66.7%、50%で94.7%と大きく変わります。
考える問い
- 11件を30件に変えると、平均と中央値はそれぞれどう動くでしょう。→ 平均は 7→10.8 に上がり、中央値は6のままです。外れ値に強い要約が中央値です。
- 検査の誤検知率
fprを0.05から0.01に下げると、発生率2%での陽性的中率は? → $0.018/(0.018+0.0098)\approx 64.7\%$ まで上がります。誤検知率を下げる効果が大きいことがわかります。
発展:定義の流儀・独立と無相関・抽出法の偏り
分散の流儀:教科書によっては $S_{xx}/n$ を「分散」、$S_{xx}/(n-1)$ を「不偏分散」と呼び、別の教科書では $S_{xx}/(n-1)$ を「標本分散」と呼びます。試験では問題文の定義に従い、実務の報告では「n−1で割った」と明記します。n が大きいと両者の差は小さくなります(n=100なら約1%)。
独立と無相関:独立なら相関係数は0ですが、相関係数が0でも独立とは限りません。$X$ が $-1, 0, 1$ を等確率でとり $Y=X^2$ のとき、共分散は0ですが $Y$ は $X$ で完全に決まります。相関係数は直線的な関係しか測りません(「共分散と相関」(有料版))。
期待値の和:$E[X+Y]=E[X]+E[Y]$ は独立でなくても成り立ちますが、$V[X+Y]=V[X]+V[Y]$ は独立(正確には無相関)のときだけです。一般には $V[X+Y]=V[X]+V[Y]+2\,\mathrm{Cov}(X,Y)$ です。
抽出法の偏り:系統抽出は、名簿の並びに周期(例:7日周期のシフト表から7人おき)があると、特定の曜日だけを選ぶ偏りが生じます。集落抽出は調査の手間が減る一方、集落内の人が似ていると精度が下がります。層化抽出は層内が均質なほど精度が上がります。いずれも、回答しない人の偏り(非回答バイアス)は抽出法では防げません(「抽出と回収の偏り」(有料版))。
局所管理の実例:肥料の効果を比べる畑の実験で、日当たりの違う区画をまとめて1つのブロックとし、ブロック内で肥料をランダムに割り付けると、日当たりの差が比較に混ざりにくくなります(「ブロック化・層別化」(有料版))。
よくある失敗
失敗1:n で割るか n−1 で割るかを確かめずに選ぶ
誤った例:「不偏分散を求めよ」という問題で、偏差平方和28を n=5 で割り 5.6 を選ぶ。
なぜ誤りか:不偏分散は n−1 で割るので $28/4=7.0$ が正解です。選択肢には5.6、7.0、$\sqrt{7}\approx2.65$、$\sqrt{5.6}\approx2.37$ が並ぶことがあり、どれも「計算は正しいが求める量が違う」値です。
直し方:計算を始める前に、答案の横に「求める量:不偏分散(n−1)」と書く。答えが出たら、単位(2乗か元の単位か)でもう一度確かめる。
失敗2:成長率を算術平均でまとめる
誤った例:+20% と −25% の平均成長率を $(20-25)/2=-2.5\%$ とする。
検算すると、$100\times0.975\times0.975\approx95.06$ で、実際の最終値90と合いません。成長率は掛け算で積み重なるので、正しくは幾何平均 $\sqrt{1.2\times0.75}-1\approx-5.13\%$ です。
直し方:「1期あたりの平均成長率」は、最初と最後の値の比 $90/100=0.9$ の k 乗根から1を引く、と覚える。答えを出したら、その率で元の値から最終値を再現できるか検算する。
失敗3:$P(A\mid B)$ と $P(B\mid A)$ を取り違える/分散の引き算をする
誤った例A:「検査は不良品の90%を陽性と判定する」と書いてあるので、陽性の製品が不良である確率を90%と答える。正しくは表を作って $180/670\approx26.9\%$。分母が「不良品」から「陽性」に変わっています。
誤った例B:独立な $X$(分散16)と $Y$(分散9)について、$V[X-Y]=16-9=7$ とする。正しくは $V[X-Y]=V[X]+(-1)^2V[Y]=25$。$Y$ を引いても、$Y$ のばらつきは加わります。
直し方:条件付き確率は「〜のうち」の後ろを分母として表に書く。分散の1次式は係数を2乗する($(-1)^2=1$)と覚え、分散が負になったら必ず誤りと判断する。
まとめ
- 計算の前に求める量(分散か不偏分散か標準偏差か)を言葉で確定する。選択肢には「計算は正しいが量が違う」値が並ぶ。
- 平均の大きさが違う集団は変動係数で比べ、成長率は幾何平均でまとめて検算する。
- 条件付き確率は仮の人数の表に直し、「〜のうち」を分母にする。ベイズでは事前確率(発生率)が結果を大きく左右する。
- $V[aX+b]=a^2V[X]$、独立なら $V[X\pm Y]=V[X]+V[Y]$。分散が負になったら誤り。
- 抽出法(単純無作為・層化・集落・系統・多段)とフィッシャーの3原則(反復・無作為化・局所管理)は目的とセットで覚える。
用語
- 変動係数(coefficient of variation)
標準偏差を平均で割った値。単位がなく、平均の大きさが違う集団のばらつきを比べるのに使う。
- 幾何平均(成長率)(geometric mean)
各期の倍率 (1+r) の積の k 乗根。1を引くと1期あたりの平均成長率になる。
- 歪度(skewness)
分布の左右の偏りを表す指標。右に裾が長いと正。
- 尖度(kurtosis)
分布の裾の重さ・とがり具合の指標。正規分布を基準に3を引いた超過尖度で表すこともある。
- フィッシャーの3原則(Fisher's three principles)
実験計画の原則で、反復・無作為化・局所管理の3つ。
- 集落抽出(cluster sampling)
学校や店舗などの集団を単位に無作為に選び、選んだ集団の全員を調べる抽出法。
よくある質問
なぜ n−1 で割るのですか?
標本平均は標本に最も近くなるように決まるため、標本平均からの偏差平方和は、母平均からの偏差平方和より小さめになります。n−1で割ると、その小ささを平均的に補正でき、母分散の不偏推定量になります(「無作為標本と推定量」(有料版))。
平均と中央値のどちらを答えるべきか、どう判断しますか?
試験では問題文の指示に従います。実務では、外れ値や右に裾の長い分布(所得・待ち時間など)では中央値も併記します。合計を問題にする場面(総売上の予測)では平均が必要です。
ベイズの問題で式を覚えられません。
式を覚えるより、10,000人などの仮の人数で表を作るほうが確実です。表ができれば、求める確率は「〜のうち」の行か列の合計を分母にした割り算です。
条件が変わって、独立でない場合はどうなりますか?
期待値の和はそのまま成り立ちますが、分散には $2\,\mathrm{Cov}(X,Y)$ の項が加わります。問題文に「独立」とあるかを必ず確認し、なければ共分散が与えられているかを探します。
疑似相関と、ただの偶然の相関は違うのですか?
違います。疑似相関は共通の原因(交絡因子)による系統的な相関で、データを増やしても消えません。偶然の相関は標本のぶれによるもので、データを増やすと弱まります。どちらも因果関係の証拠にはなりません(「DAGと交絡」(有料版))。
仕事でこの内容をどう判断に使いますか?
例えば不良検知AIの導入判断で、「精度99%」と聞いたら、不良の発生率と誤検知率から陽性的中率を計算します。発生率が低いと警報の多くが空振りになり、現場の確認作業が増えるので、運用コストの見積もりが変わります。
確認問題
問1 データ 2, 4, 4, 6, 9 の不偏分散(n−1で割る)はどれか。
- ① 5.6
- ② 7.0
- ③ 2.65
- ④ 28
解答と解説
正解:②
平均5、偏差 −3,−1,−1,1,4 の2乗和は28。28÷4=7.0です。
問2 売上が3年間で +10%、+10%、−20% と変化した。1年あたりの平均成長率に最も近いものはどれか。
- ① 0%
- ② 約 −1.0%
- ③ 約 −1.1%
- ④ 約 +3.3%
解答と解説
正解:③
$1.1\times1.1\times0.8=0.968$。その3乗根は約0.9892で、約 −1.08% です。
問3 製品Aは平均20kg・標準偏差2kg、製品Bは平均500kg・標準偏差25kg。相対的なばらつきについて正しいものはどれか。
- ① Bは標準偏差が大きいので、相対的なばらつきもBが大きい
- ② 変動係数はA=0.10、B=0.05で、Aのほうが相対的にばらつく
- ③ 単位が同じなので標準偏差だけで比べればよい
- ④ 変動係数は単位があるので比べられない
解答と解説
正解:②
平均の大きさが違うときは、変動係数(標準偏差÷平均)で比べます。
問4 発生率1%の故障を、故障品の99%で警報、正常品の2%で誤警報する装置がある。警報が鳴ったとき本当に故障している確率に最も近いものはどれか。
- ① 99%
- ② 約98%
- ③ 約33%
- ④ 1%
解答と解説
正解:③
10,000台なら故障100台中99台、正常9,900台中198台が警報。99/(99+198)≈33.3%です。
問5 独立な確率変数 $X$(分散4)と $Y$(分散1)について、$V[3X - 2Y]$ はどれか。
- ① 10
- ② 32
- ③ 40
- ④ 8
解答と解説
正解:③
$9\times4+4\times1=40$。係数は2乗し、引き算でも分散は足します。
問6 畑の日当たりの違いが結果に混ざらないよう、日当たりの似た区画をまとめ、その中で肥料をランダムに割り付けた。フィッシャーの3原則のうち、主に何にあたるか。
- ① 反復
- ② 局所管理
- ③ 系統抽出
- ④ 層化抽出
解答と解説
正解:②
条件の似たブロック内で比較し、ブロック間の差を比較から除くのが局所管理です。
次に学ぶこと
次は 推定と区間 で、標本分布と区間推定を「条件を読んで式を選ぶ」形で整理します。標準誤差の考え方に不安があれば 「標準誤差」(有料版) へ戻ってください。
この授業で間違えた問題は、誤りの種類で戻り先を決めます:分母の取り違え → 「条件付き確率」(有料版)、「検査・分類のベースレート」(有料版)/分散の計算 → 代表値と散らばり、「期待値と分散」(有料版)/成長率 → 指数と増減率/実験・抽出の用語 → 「抽出設計と選択バイアス」(有料版)、「ブロック化・層別化」(有料版)。この授業の確認問題だけで習得とはしません。CE01の総合テストと模試(オリジナル模試と弱点補習)で判定します。
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